●「空港による村の破壊は許されません」

二期工事差し止め控訴審で清水和邦教授が証言

■11月28日東京高裁第16民事部において二期工事差し止め訴訟控訴審の第7回口頭弁論が行われ、福井県立大学の清水和邦教授が証人として出廷しました。
 清水教授は、「成田空港周辺の村落共同体の法的性質について」と題する「鑑定意見書」を作成して裁判所に提出し、それに基づいて証言を行いました。証人尋問は、弁護団の葉山岳夫、一瀬敬一郎弁護士出廷のもと一瀬弁護士から行われました。
■証言の核心は、二期工事の強行・空港建設によって東峰部落や天神峰部落、中郷部落などの村落共同体が破壊され、住民に対して多大な被害・損害を与えている実態から、一審判決の誤りを明らかにしたことです。

■まず初めに、村落共同体が江戸、明治時代以来の「むら」を軸として形成されてきた過程を明らかにした上で、村落共同体が集団として共通の生活圏・生活地域を基礎とした極めて重要な生活共同体であることについて証言されました。
 とりわけ、苦しい開拓の中で形成されてきた東峰部落などの村落共同体は、生活上欠くことのできないものでした。農作物がまともに取れるようになるまでには何年もかかりました。それからようやく農業生産の基盤ができ、営農の向上がかちとられるようになるのです。その間、一戸の家族労働だけでは足りない農作業の時には、同じ部落内で協力し、お互いに手伝う「結い」という共同作業が行われたのです。
 ところがこのように生活にとって重要な村落共同体が、空港建設の強行によって次々と破壊されました。空港敷地や保安施設敷地のために、騒音地区から約900戸(1993年段階)が強制代執行などによって農地を強奪され、移転・離村を余儀なくされました。そのことによって、農業・農民にとって不可欠な生活共同体としての相互補助や年中諸行事、また自然災害の際の共助等の社会的諸活動が成り立たなくなり、生存権が著しく侵害されてきたのです。壊滅的な実態は、56戸あった東峰部落が7戸、28戸あった天神峰部落が市東孝雄さん宅1戸、26戸あった騒音直下の中郷部落が鈴木幸司さん宅1戸になっている現実に如実に示されています。これらの状況は全て、二期工事・空港建設によってもたらされていることはいうまでもありません。

■以上のように東峰・天神峰や中郷などの村落共同体が破壊され、共同体として著しい被害・損害を受けているにもかかわらず、一審判決ではこのことを認めてないことから、明らかに一審判決は誤りであることが続いて証言されました。
 空港建設によって村落共同体が破壊され、廃村化に追い込まれたことは否定しようのない歴然たる事実です。廃村化によって残っている者の生活上の不便や農業経営等への悪影響が生じていることは一審でも繰り返し立証してきましたが、約1時間半にわたる清水教授の証言によってきわめて鮮明になりました。本来は法的にも保護されねばならない村落共同体が空港建設によって破壊された事実を認めると、二期工事差し止め請求の根拠となってしまうので、千葉地裁はこれを否定したのです。
 このように、極めて政治的に強行された一審判決の誤りは絶対に許すことはできません。
■次回公判は、07年1月30日15:00から最終弁論が行われます。萩原進さんや清水教授の証言で明らかになった一審判決の誤りを全面的に論証するものです。この最終弁論で控訴審は実質上の結審となります。次回裁判の傍聴にお集まり下さい。

  

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