●農水大臣による不当な棄却裁決を弾劾する

――市東さん怒りを語る

ブロッコリーの収穫をする市東孝雄さん
ブロッコリーの収穫をする市東孝雄さん(06年12月7日)

 1月29日、松岡利勝農林水産大臣が、市東孝雄さんの行政不服審査請求対して行った「棄却裁決」は不当きわまりないものです。
 農業と農地を守ることを最大の責務とする農水大臣が自ら〃農業・農民切り捨て〃の裁決を強行したのだから、何をかいわんやです。
 裁決書の問題点は大きく3点です。第1は、事業認定以来40年以上経過して事業認定自身が失効した結果、土地収用法が適用できなくなった土地について、農地法や民法など他の法律によって、取得しようとすることの違法性、不当性です。

 土地収用法は、今の憲法の原理である私有財産制の否定を含む、きわめて例外的な強権法であって、数々の制限の元に発動が認められている法律です。
 この土地収用法という公法で取得できなかった土地を下位法である農地法などで取得しようとすることは、違法性の高い脱法行為であって、断じて許されません。しかもそれを国土交通省と一体の成田空港会社という公的性格の強い機関が行うことは言語道断です。
 第2点は、「耕作者の同意なき底地の売買」という争点について、「空港会社は、県知事の許可なく農地転用のための所有権取得ができるのだから、権利者の同意はいらない」と言い張っている点です。
 しかし、このような場合について、農水省自身が局長名の通達を出して「5条による転用と耕作者の同意は同時に行うこと」(1971年4月26日)と指示しています。
 そして、この指示は、空港公団や空港会社のように「知事の許可がいらずに転用のための農地の取得ができる場合」にも、当然適用されるのです。
 この指示は1998年の農地法改正で、第5条の2項3号という形で明文化されました。この点で違法性を自覚している農水大臣は、裁決書の中で、「第5条の2項3号は1998年にできた条文であって、該当の農地を買収した1988年にはできていなかった」旨書いていますが、前述のように法律に準ずる「局長通達」という形で、農水省自身が指示していたのです。裁決書の不当性は明らかです。
 しかも農水大臣はご丁寧にも次のように言って、裁決のデタラメさの上塗りをしています。「耕作権者の同意という該当の条文は、権利を有する者の保護を目的とするものではなく、転用を確実にするためのものだ」、「だから耕作権者の同意は要らない」と。
 しかしこれは、子供だましにもならないウソ・ペテンです。条文の趣旨が「確実な転用のもの」であろうが、「権利者の保護のためのもの」であろうが「権利者の同意を求めている」という事実は動きません。条文の趣旨はこの際関係ないのです。
 条文が「権利を有する者の同意」を求めていることは事実であって、その(市東さんの)同意がない、ということはそれだけで明らかな5条2項3号違反なのです。
 農水大臣自身は、「棄却理由の補強」を意図してこの「条文の趣旨」うんぬんを持ち出したのですが、逆に墓穴を掘っています。要するに、農水大臣はNAAによる5条違反を認めている、ということなのです。
 第3点は、「耕作権解約請求権」という債権的請求権の消滅時効について何と「法によって設けられた手続き上の請求権だから時効によっては消滅しない」などと、まったく荒唐無稽な論理を持ち出して、解約請求権が10年(1998年)で時効消滅していた事実を否定しようとしています。
 しかし、時効制度が私法、公法を問わず適用されることは、学説の常識です。顧問弁護団の弾劾声明でも指摘している点です。まさに苦しい言い逃れと言わざるをえません。
 以上のように、今回の農水大臣による棄却裁決は、違法、不当なものであり、撤回されなくてはなりません。
 市東孝雄さんは次のように怒りを語っています。「本当にでたらめきわまりない決定で、怒り心頭というか、表現する言葉がないよ。しかも農業と農民を守るべき農水大臣だよ。こんなことを許していたら世も末。徹底的に闘う」
 2月19日の耕作権裁判への傍聴に大結集して反撃していきましょう。
 

  

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