雨宮処凛、75年生まれ32歳。予備校生を経てフリーターになると同時に、不況に直面して時給がどんどん下がり始める。彼女いわく「不安定な生活は不安定な心を生み、社会から必要とされていないという気持ちは、簡単に自己否定につながる。そんなフリーター生活を12年も続けてしまうと社会への入り口はきっちりガードされていて、そこから抜け出す道などないのだ」
自傷行為、オーバードーズ(薬物の飲みすぎ)を繰り返してきた彼女が、この本を書こうと思い立ったのは “プレカリアート”という言葉との出会いから。
メーデーのデモの告知文として、この言葉はネット上に現れたそうです。
「生きることはよい。生存を貶めるな!
低賃金、長時間労働を撤廃しろ、まともに暮らせる賃金保証を!
社会的排除と選別を許すな。やられたままでは黙ってないぞ!
殺すことはない、戦争の廃絶を!
いまや全雇用の3人に1人は非正規雇用(プレカリアート)である。(後略)」
プレカリアートとは、プレカリオ(不安定な)と、プロレタリアートを組み合わせた造語で、不安定さを強いられた労働者ということ。03年、イタリアの路上に落書きとして現れ、以来世界中に広まったそうです。
彼女はこの本の中で、“自己責任”の名のもとに孤立し、追い詰められている若者達に、悪いのはあなたではない、人を人として扱わなくなった資本主義に「生きさせろ!」という反撃を開始しよう、と呼びかけています。
なぜ、こんなことになったのか?その点も明快に語られています。
「95年、日経連が宣言したからだ。これからは働く人を3つの階層に分け、多くの人を使い捨ての激安労働力にして、死なない程度のエサで生かそう、と。国内に『奴隷』を作ろうという構想だ。この状況は、10年以上前から用意されていたのである」
日経連報告の本質は、繰り返し解説されてきました。頭ではわかっているつもりでしたが、“生きさせろ!”とは文字どおりの生存を意味していることに衝撃をうけました。
私は、1955年生まれです。高度経済成長期、一億総中流といわれた労働者家庭で育ちました。学生から三里塚にきて、以来31年、幸いにもこれまでの人生の中で、衣食住の心配だけはせずに過してくることができました。
しかし経団連は、もう日本に農業はいらないと宣言しました。作れば作るほど赤字が膨れ上がる米農家、一家心中に追い込まれた青森のりんご農家の現状が、そのことを端的に示しています
“生きさせろ!”は農民の叫びでもあります。労農連帯で、安部、御手洗を倒そう!
彼女いわく「生存権を21世紀になってから求めなくてはいけないなんてあまりにも絶望的だが、だからこそ、この闘いは可能性に満ちている。『生きさせろ!』という言葉ほどに強い言葉を、私は他に知らないからだ」
ちなみにこの本は、7月、日本ジャーナリスト会議による「日本ジャーナリスト賞」を受賞しました。皆さんに、この本の一読を、お勧めします!(K)
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(写真上)
6月9日、東京都内で開かれた労働者集会(「ワーカーズ・アクション」)
(写真下)
「生きさせろ」と叫んで闘われた6・9ワーカーズ・アクション集会に参加して連帯発言をする反対同盟