● 「農民、消費者、労働者はつながろう」

――「市東さんの農地取り上げに反対する会」主催 9・8講演集会(3)

9・8講演&パネルディスカッション

■(承前)この後、コーディネーターの吉川ひろしさんから、各パネラーに2回目の話を促す問題提起がなされました。質問は「農業と環境」。
■まず指名されたのが残土・産廃ネットワークちば代表の藤原寿和さん。藤原さんは日本全体とりわけ千葉県において、農業をやる基盤である土壌を始めとした環境汚染について、きびしい警告を発しました。「千葉県は産廃の不法投棄で指折りの県だと言う話を先ほどしましたが、遊休農地や耕作している農地にも違法な投棄が行われている。最大の問題は汚染の実態が分からないことです。行政もきちんと調べようとしない」と指摘しました。
■そして、堂本県政を厳しく批判しました。8月21日に旧海上町で起きた産廃処分場建設に関する行政訴訟で、千葉地裁が住民勝訴の判決を出しました。藤原さんは「画期的な判決ですが、生物多様性の確保を掲げる堂本知事がこれに控訴を断念するという選択をしなかった。本当に許せません。抗議行動を行いました」と語りました。
■「どうしたらいいのか」という問題について藤原さんは「結局、つながることだと思います。生産者と消費者、都市と農村がつながる、共同作業をするということだと思います」としめくくられました。
■つづいて三宅征子さん。「藤原さんのおっしゃるとおりだと思います。敵は分断を狙ってきている。労働組合もつぶされている」と賛意を示しました。さらに萩原さんの「農産物を金に換算するところから話がおかしくなる」旨の発言についても「そのとおりです」と述べた上で、ポストハーベスト農薬問題でアメリカを訪問したときの経験を語られました。「アメリカの農民も置かれている状況は同じです。自分のところは後継者はいない、と言っていました。アメリカでも大規模工場型農業によって農家は駆逐されています。2周遅れでアメリカのあと追っている日本、という発言がありましたが本当です」「どうやって消費者にこの農業問題の深刻さを知らせていくか。数字を使ったやり方も有効かと思っています。例えば、財界は農産物の関税で消費者は2兆円損をしている、と煽る。だったら私たちは、田んぼはダムの働きをしている。それと同じ機能を果たさせるには11兆円かかるという試算もあります」としめくくられました。

■山下惣一さんが発言を求められました。山下さんの問題意識は「この農業の危機をどうしたら多くの人に分かってもらえるだろうか、その手段、方法は」というものです。「安全問題ではだめでしょう。『安全なら(外国農産物でも)いい』という話に流れる。私の考えではやはり環境問題だと思いますね。環境は輸入できないわけですから、一度壊したら元に戻りません。この関連でフードマイレージという問題があります。これは巨大な環境問題なんです。輸入農産物の量と運ばれてきた距離をかけあわせるわけです。この指標で見ると日本は、アメリカ、韓国の3倍、英・独の5倍、フランスの9倍だそうです。それほどの量と距離の農産物を日本は輸入している。しかもこれは間接的に水を輸入していることになる。農産物を育成するのに使った水ですね。いま水の危機が世界で問題になっていますが、無視できない問題です」と鋭い問題提起を開始しました。
■「日本が農産物を輸入するのに使っている交通機関が発生する温暖化ガスは日本国内すべての輸送の1・6倍になるそうです。だから輸入をやめれば、国内全部の輸送をやめた以上の二酸化ガス対策が一瞬でできる、こういうことです。だから、国内農業を残さなければいけないんです」としめくくられました。
■坂本進一郎さんは、「10年も前から私は農民の一票一揆を呼びかけてきましたが、ぜんぜん反応がありませんでした。ところが、自分が呼びかけたのも忘れた今頃になって、先の参院選のことですけど、一票一揆が起きた。民主主義も少しは機能しているのかなという感想を持っています」「歴史家の井上幸治は、秩父困民党は自由民権運動の最高かつ最大の闘いだ、と言ってますが、成田(空港反対)の農民のがんばりはそれに匹敵するものだと私は思っています。萩原さんも言ったように、民主主義、人権の問題としてとらえていくことが重要です」と発言しました。

■吉川さんから「萩原さん、全体をまとめる発言をお願いします」と促され、萩原進さんが、2回目の最後の発言にマイクを取りました。
■「とにかく、今敵さんの側の危機がひどいわけです。ここのところをしっかり見ることが重要だと思います。ややもするとこちらだけ厳しいかのように錯覚しますが、ぜんぜん違います。むしろ向こうの方が大変なんです。だから、たとえば農業委員会や農業会議や農協や農地法やという農業団体、農業関係の法律、それらが全部じゃまになっているんです」「市東さんの問題なんか本来なら農業委員会で受け付けられない案件なんですよ。農業をつぶすことを国策としたんです。だったら全国の農民ともう1度団結して、労働者の力も借りて闘いを盛り上げようじゃないか」
■「アジア・ゲートウェイ構想なんていうとんでもない攻撃まで出てきています。要するに国内農業は全部つぶして、食料はアジアから略奪するという政策です。私たちの立場は作るものと食べる者が一緒になってともに農業を守っていこうということです。その場合、家族農業が重要です。日本の風土に合っているんです。みんなで行動を起こしましょう。市東さんの問題はそういう意味でも焦点です」
■パネラー各氏とコーディネーターの吉川さんに割れるような大きな拍手が送られました。
■会場とパネラーの簡単な質疑が行われました。

■最後に「市東さんの農地取り上げに反対する会」の活動紹介が行われました。共同代表が坂本進一郎さんと残土産廃ネットワークちば事務局長の井村弘子さん。事務局員も全員登壇です。吉川ひろし県議、足立満智子成田市議ら5人が勢ぞろいしました。「反対する会」の層の厚さ、広がりとパワーを感じさせる陣容です。大きな拍手の中、共同代表の2人が発言し講演集会をしめくくりました。
■会場では多額のカンパが寄せられ、入会者もつぎつぎ現れました。

  

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