●「敵のいやがることをやろう」

――「市東さんの農地取り上げに反対する会」主催 9・8講演集会(2)

■(承前)つづいて三宅征子さん。三宅さんは食の安全を追及する運動を長年続けられて来られ、農業破壊のアメリカの実態が、日本に持ち込まれようとしていることを警告されて来られました。「かつて公害問題のパイオニア宇井純さんと交流した時に教えてもらいます。『相手は国なんだから敵のいやがることをせよ』と。「でもなかなか大変なんです。ある学校で非常勤講師をしていますが、メッセージが生徒になかなか届きません。それでも『あななたちは若いからジャンクフードのようなものを食べていても平気かもしれないけれど、年をとったらそのツケが回ってくるのよ』『自分の子どもたちの世代がどうなるか、考えるべきよ』と〃脅して〃います」「今の日本はアメリカの言いなりで2周遅れで、悪いものを導入しているような気がします。どうしたらいいか、という具体論については、また後ほど話したいと思います」と、消費者運動、教師の立場での豊富な経験に裏づけられた問題提起を語ってくれました。
■つづいて坂本進一郎さんが発言。秋田県大潟村で農業を続け、市東さんの闘いを支援する会の共同代表でもいらっしゃいます。「現在、農家は12000円の売り価格の米を、15000円もかけて作って、3000円の赤字を覚悟しながら米作りをしている状態です。トヨタは22兆円も売り上げて、農業は日本全体でも9兆円弱でしょうか。これではトヨタが基幹産業だ、という話になってしまいます。農産物の自給率が39パーセントを割りこんだ、と報道されていますが、私は大本営発表だと思います。もっとずーっと低くなっていると思う。農業がなくなったら国が亡ぶということを強調し警鐘を鳴らしたいと思います」「農民をバラバラにし、農民と労働者、消費者をバラバラにすることが政府の狙いですが、負けずに農業をつづけていきたい」と締めくくりました。坂本さんの顔には三里塚と共に集会を成功させている喜びがあふれているように感じられました。



■パネル討論の第1回目の発言の最後に反対同盟の萩原進さんがしめくくりました。「1960年代は農村の若者が都市に集中する中で、成田空港問題というのは典型的な農地強奪問題でした。空港が第一なんだ、公共事業なんだと。では農業はどうなのか、という主張はしたのですが、どうしても個々の農民の叫びというレベルを出なかった。ところが今、市東さんの農地取り上げ問題というのが出てきた。問題は市東さん1人の問題じゃありません」とまず、問題の重大性に注意を喚起しました。
■そして萩原さんの年来の主張である農業の「価値論」に入っていきました。「農業というのは金に換算できません。農産物は価格の形成がされないんです。市東さんは1億8千万円の補償を蹴りましたが、金の問題じゃない、高い安いの問題じゃないんです」「大体、野菜というのは大地を食べているんです。山や川、海の水を飲んでいるんです。これを破壊しようとしているのが今の自民党政府です。収用法が失効した中で、農地法で農地を収用するなんていうことがどうして許されるのか。こんなことを許していたらどこの農地も食い物になっちゃう。絶対に許しちゃなりません。そしてこれは市東さん個人の問題じゃありません。全国の農民の課題です。イの一番に全国の農民に知らせ、一緒に行動を起こそう」と熱弁。
■「農民と消費者が一緒に農産物を作っていこうというのが私たちの産直です。どんな時代になろうと産直の消費者に食料を供給する、そのことによって自分たちの気持ちをわかってもらう、そういう相互に連携した意識改革が必要です。そして大切なのは、日本の圧倒的多数を占める労働者階級の問題です。彼らにとっても実は切実な問題なんです。スーパーで野菜の値段が安いわねと奥さんが喜んでいるかもしれないけれど、それが旦那の首を占めている。給料をどんどん引き下げている、年収で200万、300万でいい、そういうい巧妙なカラクリを見抜かなければならない」「出てくる結論はひとつ。労働者と農民、消費者の連携、これ以外にありません。市東さんへの攻撃は農民をつぶすものとして、みんなで反撃していこうではありませんか」とアピールしてしめくくりました。
■会場からは、どの方の発言にも熱い共感の拍手が送られました。(つづく)

  

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