労農連帯の旗高く−萩原講演録(2)

――同じ立場で行動しよう

 食料を外国にもっともっと頼っちゃう。そして土地もそれと同時に開発の名のもとに荒らされていくという方向に進んでいって、日本の中で、第一次産業、とりわけ農民階層というのがなくなっていいのかどうかという、これが今問われているんです。

 今、労働組合組織をつぶそうとして、教育労働者とか全逓とか、あるいは自治体労働者とか、まぁ国鉄なんかその前にそういう攻防がありましたけども、ひとつの産業の中で資本にとってみれば、許せないっていう立場の人たちを抹殺しようとするのと同じように、それ以上にと言っていいと思いますが、ひとつの階層を日本の階級の中から消滅させる、そういう攻撃がなされてきている。
 そういうことを私たちは成田の戦いの中で見いだして、自分たちの問題として引きずり出して、同じ立場で考えて行動を起こそうということを全国の人たちに今、訴えるわけですね。

 耕すものに権利がある


「有機・無農薬野菜づくりは私の誇り。
私は攻撃に対して一歩も引かない」
と語る市東さん
----------------------------
 その典型的なものとして、市東孝雄さんという人がいますけども、その人が90年、親父さんとおじいさんの代から築き上げてきた小作地を今、暫定滑走路の誘導路がへの字に曲がっているから、まっすぐにするためによこせと、取り上げる、という形で攻撃をかけられている。憲法改正のように、支配する側にとってみれば意のままにできるようにしたい、そういう攻撃が現れてきているわけですね。
 これは何かっていうと、まず前提として、労働者にとってみれば産業革命というのが大きな転機だったように、農民にとってみれば、自分は戦争を知らない戦中派ですけども、戦後の農地解放ということがあるわけです。戦争直後までは圧倒的に多くの農民が、自らの土地を持てず、自作農としての存在が非常に少なかった。
 そういう中で、多くの小作人が立ち上がって、耕作者が自らの権利を有すると、あるいは耕作する人がその土地を持つということを柱にしながら農地解放というものがなしとげられて、そして自作農という権利を獲得したわけですね。
 これはけっして誰かに与えられたものじゃない。それまでは地主とか、あるいはその一帯を支配している人たちに面と向かって物事を言えない立場だったわけです。千葉でいえば古い話で、佐倉惣五郎という人がいて農民の不平不満を訴えたことによって、首をはねられるっていうことがありましたけど、そういう時代と同じように、地主や地域を支配している者に対して反発はできなかった。だけども戦後やっぱり農民が農民として生きていくためには、自らのものとして土地を耕して生活していくことが必要なんだという形で全国各地で農民の闘いが勃発したわけですね。
 そのことが契機になって、農地解放ということがなされて、そこから生まれたのが農地法であると。今、憲法問題で、憲法はアメリカが作ったものであって、それを強引に押し付けられたんだと自民党なんか言っていますけども、戦後さまざまな闘いが起きて、これ以上野放しにすると革命的状況が起こり得るという中でGHQも日本政府も憲法や農地法を定めないわけにはいかなかった、ということでできあがったわけですね。
 ですから農地法の骨格をなすのは先ほども言いましたけども、その土地を耕している者がいちばんの権利者であると。そしてその権利者はその土地を耕すことを第一義的に考えるものである。そういう形で、土地っていうものを農民の命として与えたわけです。

 改憲攻撃と一体だった

 それが時代の流れの中で、いろいろと農地法が改悪されてきたわけですね。そのままでは港湾建設とか、公共事業で土地を取得するのが困難という理由で、例えば「空港用地に取得する時には例外」などということを一番下に付随的につけるという形で、年代を追って改悪してきたわけです。
 だけど骨格としては、農地法というものは農民を守り、農村を守り、農業を守っていく、それがやはり母体になっているわけですね。
 にもかかわらず農地法を使って、耕作をしている賃貸契約を破棄すると言う。ちょっと分かりづらい話かもしれませんが、それまでは我々の土地を取り上げるには、土地収用法しかなかったんです。だけど成田の場合、計画から40年もたって、事業認定というのが失効してしまったんですね。この期限は20年説もある、30年説もあり、我々は10年でそんなのは失効してるんだと言ってましたけど、彼ら(政府・空港公団(現:成田空港会社))がやった円卓会議という場で、彼ら自身も事業認定を取り下げるという形で失効を認めたんです。
 代執行ができない。だけどもそこにある土地をなんとしても取りたいということでやってきたのが、農地法に基づいて賃貸契約を破棄するというやり方です。 
 これはね、日本の中でも例を見ないですよ。地代を払わないとか、その土地を他人に又貸しして利益を得ているとか、あるいは地形を変更して違うものを建てちゃったとか、そういうことだったら契約を破棄するということもあろうと思います。しかし今度の市東さんの場合は、自分がそこで農民として農地を耕して、これからもそこで農地を守りぬいていくんだという立場の者に対して一方的に契約を破棄するというもので、こういう例はないんですよ。
 だけどもそれをあえてやってきたんですよ。だからここなんですね。やっぱり憲法改正というのは、こういうことを意味するのだと。農民がそこで土地を耕して生産をあげてゆこうとする時に、農民を守る法律を使って農民を追い出す、農民をたたき出すということがあっていいのかどうか。こんなことを許したら、何でもできるということになるんです。

  

カテゴリーにもどる