●この地で農業を続ける

―鈴木さんの田んぼで暗渠(あんきょ)排水工事


寒風の中、田んぼに溝を掘って配水管を埋める暗渠工事
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■1月末から鈴木さんの田んぼでは、新たに暗渠排水の管をを敷き直す作業が進められています。


■これは田んぼの中に周りの水を吸い集める排水管を敷いて、水はけを管理するものです。
 田んぼは稲を育てるときには水を貯め、稲刈りをする時には水を落とします(排水します)。田んぼにとって水の管理は欠かすことができません。
■「安定して水を管理したい」 この農民の思いにつけこんで、大掛かりな買収攻撃として1980年代に仕掛けられたのが成田用水事業でした。当時強固に存在していた芝山町菱田の反対同盟をつぶすために、他とは比べ物にならないほどの補助金で基盤整備をしましょう、用水で水を引きましょうというものでした。
■「これは反対同盟を切り崩す攻撃だ」そう見抜いた反対同盟は、自らの力で自主的に基盤整備を行う、自主暗渠に決起しました。延べ数十人の力を借りて、連日手掘りで田んぼに溝を掘り、素焼きの土管を並べて排水路をつくるという工事をおこないました。こうして当時の反対同盟農家が買収攻撃をはねのけて農業を続けていったのです。
■当時成田用水を推進していた人たちは「ここで農業を続けていくには用水が必要なんだ」と言って、反対する農家に同意を迫ってきました。しかしその後菱田の田んぼは次々と空港公団に売られ、農業から離れていった人も少なくありません。成田用水が農業振興のためではなく、「廃村化」のために仕掛けられたことは、今や明らかです。

■鈴木さんの田んぼの暗渠工事は、いわばこの闘いの歴史が背景にありますが、農家としては古い暗渠が効かなくなったからやり直しているだけのこと、この地で農業を続けていこうと思うから、必要な工事をしているに過ぎません。 しかし今や「この地で農業を続ける」という当たり前の言葉が簡単に言えないほど、農民が農業では食べていけない現実が広がっています。農業をないがしろにする国のやり方を私たちは認めるわけにはいきません。私たちはあくまでもこの地で農業を続けます。

(かつてに比べると材料も変わり、暗渠工事もずいぶんとやりやすくなりました。でも寒風の中での作業のつらさは変わらないものですね)

  

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