●「農なき国の食なき民」山下惣一さん講演

――「市東さんの農地取り上げに反対する会」主催 9・8講演集会が大成功(1)

■9月8日、千葉市のホテル・プラザ菜の花で「市東さんの農地取り上げに反対する会」主催による「山下惣一講演とパネルディスカッション」が開かれました。会場には、幅広い層から150人の労働者、農民、学生、市民が集まり、大成功を収めました。
■司会が成田市議足立満智子さん。パネル討論のコーディネーターが千葉県議の吉川ひろしさん。

■まず、「農なき国の食なき民」というタイトルの山下惣一さんの講演で集会はスタートしました。山下さんは佐賀県唐津市で米、みかんを作りながら、小説を書くとともに、農政批判の文筆活動と運動をを1970年代から行ってきた人です。
■山下さんは世間には2つの誤解があると切り出しました。「農業と食料の危機の問題は農民の問題ではなく、実は消費者の問題です。農家は自分の食料は確保するから困らない。困るのは消費者の方です。『連携しよう』とずーっと言ってるんだけれど理解されない。2つ目は、食料自給率。ただ数字だけを問題にしても意味はない。自給率は200%だけれども、生産されたトウモロコシは全部輸出品なんていうアメリカアイオワ州の例もある。日本の北海道でもそうです。自給率は201%ですが作った物は大半が本州に売られる。地元の人の口には入らない。こういう農産物の算出高を対象に自給率が高い、低いというのも変な話です。自給率の数字を完全に無視することはできませんが、農産物の生産の中身を問題にすべきです」
■さらに日本とオーストラリアのFTA(自由貿易協定)締結問題について「締結されれば日本の農業は確実につぶれます。農業危機がどの方向に行くか、試金石だと思っています」と警鐘を鳴らしました。最後に、農地法廃止について、「最後は農地取り上げの代執行までやる、と役人の案には書いてある」「農民は農地改革以前へ、労働者は産業革命以前へ歴史を逆戻りさせる動きが激しいが、とんでもないことです」と弾劾して講演をしめくくりました。会場から大きな拍手が寄せられました。

■パネル討論に移り、吉川さんがコーディネーターを務めました。吉川さんは青年時代に世界放浪の旅をした経験から「金があっても食料がなければ食べ物を手に入れられない地域が世界にはたくさんある。そのことを体験してきました。食料自給を無視した日本の農政を許せば日本に食べ物がなくなる。すると食べ物を求めた殺し合いが起こると思います。今日は日本の農政の問題点をパネル討論によって掘り下げていただきたいと思います」と討論の方向性を提起しました。
■パネラーは、山下さんに加えて、反対同盟の萩原進事務局次長、大潟村農民の坂本進一郎さん、残土・産廃問題千葉ネットワーク千葉代表の藤原寿和(としかず)さん、食の安全監視市民委員会委員の三宅征子(せいこ)さんの5人。
■まず自己紹介も兼ねた第1回目のパネラーの発言。最初に東京都職員も務め、環境畑で仕事を続け、第12回「田尻宗昭賞」を受賞した藤原さんが、「千葉県は、日本一いや世界一産業廃棄物の不法投棄の多い県だと思います。この問題を考えていく中で、産廃の不法投棄と農業や林業など第1次産業の危機との関係が見えてきました。最初のうちは『なぜ農民は産廃業者に農地を貸すのかあるいは売るのか』非常に不審の目で見ていましたが、問題の本質はそこにはない。農業切り捨て、林業切り捨てと言う現在の自民党政治との関係でみるべきだ、と後になって気づきました。そこから出てくる結論は、消費者と第一次産業で働く人びととが一緒に産廃問題に立ち向かわなければいけないということでした。今では農業や林業の人たちと積極的なコンタクトをとって、共同で問題の解決にあたる機運が盛り上がっています」と語りました。(つづく)

  

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