労農連帯の旗高く−萩原講演録(3)

――改憲の先取り、それが成田の姿

 今、成田で起きていることは、これだけではありません。
 住民が闘う手段として一坪共有地というのがあります。これは道路建設なんかに反対して立木をみんなで共有するとか、土地を分割してみんなで持ち合って、それで反対の意思を示していく、そういう運動なんですけど、これも収用法では取れなくなった。それで政府・空港会社は、今度は民法を持ち出して、金さえ払えばいいんだ、それだけの代償を払えば取り上げることができるんだと言い出した。一坪共有地を裁判にかけて、民法で取り上げちゃうというやり方を、市東さんの農地取り上げと同時に我々にかけてきたんです。

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 そういうのが一方ではある。他方で今、滑走路を北側に800メートル伸ばそうとしているわけですが、ここには市のゴミの最終処理場があるんです。ここをダンプ何千台もの土で埋め立ててしまったんですね。「ダイオキシンだとか、いろんな有害物質があるのに、それを撤去しないで埋め立てるのは環境破壊だ」と私たちが抗議したにもかかわらず、「撤去してたのでは間に合わない」ということで、土を被して、コンクリートで覆い隠して閉鎖して、飛行場の保安施設の用地にしてしまうというやり方を始めたんです。
 これは将来必ず有害物質が漏れる。周辺の土地、家庭、水脈、そういうものが荒らされて大変な汚染が拡がっちゃうということで、とんでもないことなる。空港用地として施設ができちゃったら、空港をぶっ止めて元から取りださなきゃならんわけですから、そんなことはこれから先、やるわけがない。「今やらないとできないんだから撤去しろ」と言ったら、「そんなことは今やってられない」と土を被して埋めちゃう、そういうやり方をしてきたんですね。現にそのためにフェンスを作って作業に取りかかろうとしている。

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住民との約束を一方的に
破棄して森は伐採された
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 さらには自分の住んでいる部落のことがあります。東峰部落と言いますけども、あの辺一帯は県有林というのが他町村まで続いてあったんです。もともと御料牧場というのが三里塚にはあって、その一部が県に払いさげられて、そこに県は、竹とか杉とか松を植えて、何十町歩という県有林を作ったんですね。県有林があったから自分たちの部落も成り立ってきたんです。そこに今度は空港予定地でもなかったのに、誘導路を造って、林の半分を切り崩しちゃうと。そういう形でかけてきた攻撃があるんです。県有林から空港会社の所有にはなったけど、地元民に対しては、「この森は残して、部落と共に森を整備していこう」ということで何度も約束して、現にそういう形で整備もしていたんです。それを突然、約束を破棄して、誘導路を造るということが一方的になされてきたんですね。

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 様々ありますが、要するにおおもとにあるのはみんな土地なんですね。土地をめぐってどうするのかということで、そこには水という問題もあるし、空気という問題も存在する。やはり農民がそこでやっていくためには、みんな欠かせないものです。森であれば、森の落ち葉を拾って堆肥にするという作業も我々はやっているわけです。その森までも破壊する、あるいは地下汚染、先程言ったように処理場を一方的に埋めちゃうと。また一方では金さえ払えば、土地や何でも自由に取り上げることができるんだという法律の網を掛けてくる。市東さんみたいに代々続いた小作地を、小作人を守る法律をねじ曲げて適用して、追い出そうとする攻撃がある。まさに民衆や国民を苦しめる、私たちの首を絞めあげるような法律改正を先取りして、適用しているのが今の成田の姿であると。
 「こんなことを許しておけない」ということで、問題をひとつひとつ掘り下げていったら、とんでもない話になってきちゃったっていうのが今日なんですね。

  

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