●市東さん、堂々の意見陳述


報告会であいさつする市東さん
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■3月12日、午後1時30分から東京高裁第11民事部(富越和厚裁判長)で、暫定滑走路認可取消訴訟の第1回口頭弁論がおこなわれました。暫定滑走路は認可から着工、供用に至るあらゆる場面で違法に違法を重ね、地元住民を無視したものであるにもかかわらず、1審千葉地裁の原判決は、それらを全く無視した極めて政治的な判決でした。 ■この日の弁論では、冒頭、原告を代表して市東孝雄さんが、1審原判決を弾劾し、暫定滑走路建設の違法性、問題性を怒りを込めて突き出した冒頭陳述をおこないました。以下、陳述内容を紹介致します。


                 意見陳述

 裁判を開始するに当って意見を表明します。私は、暫定滑走路の南端に隣接するところに住んでいます。誘導路まで家の前の畑からわずか数十メートル、滑走路まで二百数十メートルの所で、畑は4メートルくらいのフェンスで囲まれており、暫定滑走路の南端から離陸するために待機している飛行機からの排気ガス・ジェットブラストや爆音の直撃を連日うけています。とりわけ、午前6時から深夜11時まで1日150便の飛行が強行されることによって大騒音の被害にさらされています。離発着時には、会話も聞こえないほどです。また、南端から300メートルくらいのところにある民家の上空40メートル飛行も毎日繰り返されています。前任の成田国際空港会社の黒野社長でさえ、常時100デシベルをこえる騒音を地元住民にもたらしていることを認め謝罪しているほどです。
 このように民家すれすれの危険な飛行をくりかえし爆音をまきちらして、私たち住民の生活を脅かし破壊するような著しい人権侵害と被害を与えているにもかかわらず、一審の千葉地裁の判決では「まだ病人が出ているわけではないので、耐えられないほどの被害は出ていない」などというとんでもない決めつけを強行しています。こんな理不尽極まりない判決が許されるのでしょうか。それこそ病人が出たり大事故が発生して多数の死者が出なければ、被害が発生しているとは認定しないということなのでしょうか。そうなってからでは遅いのです。とりかえしのつかないことになってしまいます。これでは裁判所は、被害が出たり死者が出るのを待っているとしか考えられません。
このような不当判決から見ると、生活を脅かし恐怖を与えることによって90年にわたって農業を営んで住み慣れたこの地から私たちを追い出そうとしているとしか考えられません。政府国交省も空港会社も裁判所も、国民であれば誰でも憲法で保障されているはずの私たち住民の基本的人権や生活の権利など全く無視しています。本来裁判所は国や行政の誤りを正し、国民の人権や生活を守るべき立場にあるはずなのに、このような人権無視の暴挙に加担していいのでしょうか。これでは、三権分立など有名無実であり裁判所の存在価値はなくなってしまいます。一審の裁判所の判断は、明らかに間違っています。客観的且つ正確な事実認定を無視した政治的判決としか言いようがありません。この控訴審においては、千葉地裁の誤りを絶対に繰り返さず、政治的偏見に走ることのないよう十分な審理を尽くして公正な裁判を進められることを強く要望します。

そもそもこの暫定滑走路は、未買収地を沢山残したまま地元住民の同意を得られずに、本来の基本計画を変更するという違法な認可によって見切り発車で建設が強行されたものです。滑走路は2180メートルと短いうえに、着陸帯が国際民間航空条約(シカゴ条約)で定めている300メートルの半分の150メートルしかなくて国際標準に違反しており、オーバーラン帯も短く危険極まりない滑走路です。滑走路北端・南端両方の進入表面には立ち木が突き出ており、世界に例の無いパイロット泣かせの滑走路であることも一審で立証されています。住民の権利を著しく侵害しているうえ、航空法に違反し国際標準にも違反する前代未聞の国際空港です。住民や乗客の安全を真剣に考えるならば、到底「認可」などできない滑走路なのです。こんな危険で違反だらけの暫定滑走路は飛行を中止し、ただちに閉鎖すべきです。
この居住地は、祖父らが血と汗にまみれて開墾し親子3代90年にわたって豊かな農地につくりあげてきたものです。今では、二十数年前から始めた完全無農薬野菜を栽培して貴重な食糧を提供しています。農業は私たちが生きていくための食をまかなうためになくてはならない重要な職業です。裁判官らにおかれても皆、毎日米や野菜を食べているはずです。国民の食糧を支えているのです。私たちは空港建設計画よりもはるか以前からこの地に住み続け農業を営んでいます。空港建設計画の方が後からきたのです。私は今後も親子3代にわたって築き上げてきた肥沃な北総台地の現在地で農業を続けたいのです。食糧を支える農地を取り上げ農業を潰して空港建設を強行することは、公共の利益に反することではないでしょうか。四十数年前と同じ問答無用の強権的やり方が今も相変わらず繰り返されています。私たちを叩き出し農業をつぶすような空港建設を力ずくで強行するやり方は絶対にやめるべきです。
私は、危険と大騒音にたたきこむことによって追い出そうとする政府国交省や空港会社の卑劣で理不尽な攻撃には絶対に屈せず闘いぬきます。違法な暫定滑走路の「認可」は、ただちに取り消すべきです。
最後にこの控訴審においては、千葉地裁の誤った判決を追認することなく、住民の人権や生活の権利を守る公正な審理を十分に尽くされることを重ねて要請します。
 2008年3月12日                 成田市天神峰63番地  市東孝雄


  

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  • 暫定認可取消訴訟