成田空港会社(NAA)が明け渡しを求めている農地は、成田市天神峰の専業農家・市東孝雄さんが祖父の代から100年耕し続けてきた農地です。市東さんは無農薬有機農業で安全・安心な野菜を栽培し、多くの消費者に産地直送で届けることを生きがいに日々額に汗して働いています。
●戦後最大の強制収用との闘い
明け渡し対象となっている畑の面積は1万3千平方㍍。市東さんの耕作地の73%に及びます。耕作に必要なハウスや作業場も含みます。成田空港建設における第一次、第二次強制代執行を上回る戦後最大の農地取り上げ強制執行との闘いが市東さんの農地問題です。
市東さんが耕す農地は、本来は戦後の農地解放で市東家のものとなるはずでしたが、父親の東市さんが戦争からの帰還が遅れたために小作地として残された残存小作地です。
●耕作者の同意なき底地売買の違法
戦前の寄生地主制から戦争へと至った反省から「耕す者に権利あり」「農地は耕す人が所有することが最も適当」と農地法が作られました。
ところが、空港公団(現NAA)は農地法の精神を踏みにじり、市東さんの同意のないまま、「実は15年前に地主から底地を買っていた」として明け渡しを迫ってきました。
こんなデタラメなことが許されるはずがない、そう誰もが思いましたが、裁判所はNAAの違法・無法にフタをして最高裁においても農地取り上げ強制執行を認める判決が確定しました。
そこで、市東さんは判決の執行を許可しないように求める裁判(請求異議裁判)を起こしました。
●破綻の危機に立つ成田空港
私たちは、暴力的な空港建設と体を張って闘い続けてきました。追いつめられたNAAは、「あらゆる意味において強制的な手段は用いない」と社会的に公約しています。この公約を無視して、市東さんに農地の明け渡しを求める権利はNAAにはないのです。
さらにコロナ・ショックで航空需要は激減。「年間発着回数50万回」は夢物語となりました。破綻の危機にある成田空港そのものの存在意義が問われています。
こうした事実にもかかわらず、請求異議裁判でも1審、2審は強制執行を許可する判決を下したのです。
私たちは今、最高裁に強制執行を許可しないよう求めています。署名とカンパにご協力下さい。