圧巻の4証言でNAAの「底地買収」を断罪(新やぐら裁判)

ー内田裁判長は浅子証人を採用せよ!

 1月22日、千葉地裁民事第2部(内田博久裁判長)で、新やぐら裁判が開かれました。
 この裁判は市東孝雄さんの天神峰農地に建つ反対同盟所有のヤグラ・看板などの4つの物件について、成田空港会社(NAA)が「収去と土地の明け渡し」を求めて提訴したものですが、そもそもNAAが「旧地主から土地を取得した」としていることが、とんでもない違法・無効であることが重大争点です。
 今回は3人の同盟員など、午前から夕方まで4人が証言台に立ちました。4人はそれぞれの立場から「そもそもNAAが市東さんに農地の明け渡しを求める資格などない。したがってやぐら・看板の収去を求める権利もない」ことを明らかにする証言を行いました。

◎萩原富夫証人

◎市東孝雄証人

◎太郎良陽一証人

◎元永修二証人

(それぞれの証言はリンク先をご覧下さい)

 4氏による圧巻の証言がすべて終わったのが16時47分。だが法廷はこれで終わらず、ここから第2ラウンドの激しい攻防の火ぶたを切ったのです。
 顧問弁護団は「意見書の2」を提出し、敵性証人を一切採用しようとしない内田裁判長に対して、「浅子直樹証人だけは絶対に調べよ」と迫りました。
 弁護団は「敵性証人の必要性に関する意見書」の中で、①法理哲二(元空港公団用地部用地課長代理)、②浅子直樹(元公団用地部長)、③黒野匡彦(元空港公団総裁)の3人の証人調べが絶対に必要であることを述べていますが、中でも浅子証人は買収当時用地部の要職にあったことが推察される人物で、用地交渉の具体的中身や空港公団の方針を知るキーマンです。浅子証言は必要不可欠です。
 ところが内田裁判長は、「浅子証人だけというなら他の証人については申請を撤回するのか」と挑発的な言辞を発し、法廷内の怒りは一気に爆発しました。弁護団や傍聴席の迫力に気おされながら、内田裁判長は「事実は出ている。(浅子の)内心については必要ない」と言って逃れようとしました。冗談ではありません。浅子個人がどう思ったかの問題などではなく、空港公団の一連の行為や方針について、責任者に対して事実を問う問題です。あまりのへりくつにヤジと怒号が飛び続け、もはや廷吏も制止することができなくなりました。
 追いつめられた内田裁判長は、矛先を変えて「『判断枠組み』についてのご意見は伺ってみたいと思っています」と述べ、30日の裁判でひとまず予定されている学者証人の方に話を向けようとしました。
 判断枠組みとは、すでに農地法裁判で判決が確定していることを前提にしてこの裁判の判断をしようというもので、内田裁判長が示している姿勢であり。これ自体が大問題です。
 確定判決は、「あくまでも話し合いにより解決されなければならない」と確認された隅谷調査団の最終所見について「話し合いが頓挫した場合はその限りではない」とした一審・多見谷裁判長の重大な踏み込みそのまま踏襲しました。。弁護団はその誤りを追及しているのであり、確定判決を前提にすることなど断じて許せません。この裁判にはこの裁判独自の権限があるのです。弁護団はこの頓挫論についても徹底批判し、頓挫論を支える事実を何ひとつ示していないNAA側を徹底追及しました。
 当の原告NAAは、「事実関係には原告・被告の間で争いがないから(浅子)証人は必要ない」などと従来の主張を繰り返しました。市東さんに黙っての売買も、地代のだまし取りも事実として認め、だから事実について争いがないと言いなし、あとは裁判長におまかせというわけです。それならなぜ他に例のない「先買い」(小作権解約の前に農地を買収)をやったのか、なぜそれを15年も隠していたのか、その当時、用地部としてどういう判断をしていたのか、これはまさに事実問題に他なりません。
 空港公団は市東さんの小作権を土地収用法による強制収用で奪えるともくろんで手続きを進めていたのです。ところが強制収用ができなくなったので農地法をねじ曲げて農地を取り上げようととしたものの、それまでやってきたこととの整合性がつかなくなって様々な農地法違反を犯すに至ったのです。裁判所は一貫して農地法違反に見て見ぬふりをしてきましたが、この農地取り上げ問題の核心を知る心人物こそ浅子直樹元用地部長なのです。
 弁護団は入れ替わり立ち替わり浅子証人の必要性を説いて内田裁判長に採用を迫りましたが、内田裁判長は「できない」の一点張り。しかし、弁護団も簡単には引き下がりません。「この種の裁判で敵性証人を調べないことなどない。農地法裁判(現請求異議裁判)の一審でもやった。当時の担当者の話が必要だ。是が非でもやるべきだ」など、葉山岳夫弁護士を先頭に迫力を増して粘り強く浅子証人の採用を求めました。
 論の限りをつくした弁護団の主張の前に内田裁判長は採用しない理由も言えなくなり、NAA側は「従前通り」を繰り返しました。法廷内の怒りは頂点に達し、萩原さんは「浅子を呼べばいいだけのことじゃないか」と声を荒げ、市東さんもNAA代理人の不誠実な態度に怒りをあらわにしました。
 時刻は午後5時58分。時計を眺めていた内田裁判長は、もう時間切れだと言わんばかりにむりやり議論を打ち切り、怒号の中で閉廷を宣言したのです。

 白熱の攻防で大幅に時間が延びたことから報告会に予定していた会場は使えなくなり、怒りや興奮が冷めやらない中で、急きょ裁判所のロビーで伊藤信晴さんの司会のもと、簡単な総括を行いました。
 葉山岳夫弁護士が「いずれも非常に優れた的確な証言をしてくれた。内田裁判長は浅子証人に絞った請求にも頑として応じないが、さらに徹底的に追及したい」と決意を述べました。そして萩原富夫さんが「皆さん本当にご苦労様でした。また30日も全力でよろしくお願いいたします。頑張りましょう」とあいさつしてこの日の裁判闘争を締めくくりました。

 

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